中小企業の経営者やマーケティング担当者に、「御社のマーケティング上の課題は何ですか?」と尋ねると、かなりの確率で「集客です」という答えが返ってます。
しかし、いざ詳しくヒアリングをしてみると、「集客」よりも、もっと解決すべき課題があることがほとんどです。企業によって、その中身はさまざまですが、課題を大きく分類すると「4つ」に集約されます。
そこで今回は、中小企業が解決すべき「マーケティング課題の4分類」について解説します。
そもそも集客とは
そもそも、何を指して「集客」と言っているのかは、人によって違う場合もあります。そのため、まずはこの記事で言う「集客」の定義を明確にしておきます。
集客とは、自社の店舗やWebサイトに人を呼び込むこと。
この記事では、集客をこのように定義します。おそらく、一般的な定義とも大きくは変わらないと思います。

また、上図の通り、店舗やWebサイトに人を呼び込むためには、人との間になんらかの「接点」が必要になります。具体的には、広告やクチコミ、SNSの投稿など。
つまり、「集客に課題がある」とは、この「接点」の量が足りていないのか、あるいは、質がよくない状態だと言えるでしょう。
集客はゴールではない
では、この「接点」を改善し、集客さえできれば、本当に御社のビジネスはうまくいくのでしょうか?
残念ながら、必ずしもそうとは言えません。なぜなら、「集客」=「購入」ではないからです。集客したその先こそが重要なのです。

企業のマーケティング課題が「集客」ではないとしたら、一体どこに課題があるのでしょうか。少し前置きが長くなりましたが、ようやくここで、前述した「マーケティング課題の4分類」を解説したいと思います。
1. プロダクトに課題がある

これを言うと気分を害される経営者の方もいらっしゃいますが、「プロダクト」、つまり商品やサービスに課題があるというケースは少なくありません。
「プロダクトに課題がある」とは、その商品やサービスが購買に値する十分な価値を有していない状態のことです。言い換えると、あえてそのプロダクトを購入したいと思うほど、そのプロダクトに対して魅力(価値)を感じる人が世の中にほとんどいない状態です。
この状態で仮に集客したとしても、当然、購入には至りません。この場合、真っ先に見直すべきは、「集客」ではなく、「プロダクト」なのです。
なかなか辛辣に聞こえるかもしれませんが、モノやサービスが溢れている現代において、競合と比較したときに、十分な価値を有していないプロダクトは決して珍しくありません。
プロダクトの価値とは、極めて相対的なものです。企業側の視点では価値があるように思えても、消費者側から見たときに、同じようなプロダクトがもっと安く売られていたり、同じくらいの金額でよりよいプロダクトが存在するなら、残念ながらそのプロダクトに十分な価値があるとは言えないでしょう。
2. ターゲット設定に課題がある

1と同様に多いのが、「ターゲット設定」に課題があるケースです。
「ターゲット」というと、その商品やサービスを購入する可能性のあるすべての人たちをイメージする経営者が多いのですが、ここで重要なのは、「コアターゲット」。つまり、その商品やサービスに対してもっとも強く価値を感じてくれる人たちのことです。
※詳しくは、前回のブログ記事『経営者が誤解しがちな「ターゲット設定」の意味』をご参照ください。
「ターゲット設定に課題がある」とは、プロダクトには十分な価値が備わっているのに、それを「価値」だと感じる人がどういう人なのか、明確に定義できていない状態です。もちろん、間違った人たちをターゲットにしてしまっているケースも含まれます。
ターゲットが不明確な状態では、当然、誰を集客したらいいのかもわかりません。たとえ集客を頑張ったとしても、それが「正しいターゲット」でなければ、結局購入には至らず、お金(集客費用)の無駄になってしまいます。
3. コミュニケーションに課題がある

ここで言う「コミュニケーション」とは、価値の伝え方のことです。特に、集客した先、つまり、店頭やWebサイト上での表現の話です。
「コミュニケーションに課題がある」とは、プロダクトには価値があり、それを価値だと感じるターゲットも明確になっているのに、その価値の伝え方に問題があるケースのことです。
なぜ価値をうまく伝えられないのかといえば、ターゲット顧客から見たプロダクトの価値がはっきりとわかっていない、あるいは、わかってはいるが、うまく言語化できていないからです。
1や2の課題と同様、そのような状態で集客しても、結局購入には至らないので、お金の無駄になってしまいます。

ちなみに、コミュニケーションは、集客した先の店舗やWebサイト上だけで発生するわけではありません。上図の「接点」においても、プロダクトの価値を伝えるコミュニケーションは必要となります。
つまり、コミュニケーションに課題がある状態では、集客した人を購入まで導くのが難しいだけでなく、そもそも集客することさえも容易ではないのです。
4. 接点に課題がある

最後にくるのが、「接点」の課題です。
プロダクトにも、ターゲット設定にも、コミュニケーションにも課題がないのであれば、強化すべきは「接点」、つまり「集客」ということになります。
ちなみに、この4分類では、「接点におけるコミュニケーションの課題」については、前述の「コミュニケーションの課題」として整理しています。
では、ここでいう「接点の課題」とは何かというと、主に以下の3つです。
● 接点の量が足りていない
● ターゲット顧客との間に接点が作れていない
● 接点の種類がよくない(費用対効果が低い)
量の問題だけであれば、正直、予算(あるいは人的リソース)をつぎ込めば解消できます。しかし、重要なのは、設定したターゲット顧客との間に、費用対効果の高い接点を作ることです。
接点には、さまざまな種類があります。テレビCMや新聞広告などのマス広告、看板やデジタルサイネージなどの屋外広告、検索広告やディスプレイ広告などのWeb広告、SNS、SEO、ローカルSEO、ポータルサイト、などなど。
どの接点(集客施策)が有効なのかは、業種によって大きく異なりますし、誰に(ターゲット設定)、何を(プロダクトの価値)を伝えたいのかによっても大きく変わってきます。
たまに、詳しいヒアリングや戦略設計をする前段階で、「いい集客方法を教えてください」と言われることもありますが、私がそういった質問には回答をしないようにしているのは、そのためです。もっと言うと、そういったケースでは、集客よりも先に解決すべき課題があることがほとんどだからです。
マーケティング課題の4分類

まとめると、企業のマーケティング課題は以下の4つに分類できます。
プロダクトに課題がある
ターゲット設定に課題がある
コミュニケーションに課題がある
接点(≒集客)に課題がある
前述した通り、中小企業経営者の多くは、「集客」に課題があると考えがちですが、私の経験では、「プロダクト」や「ターゲット設定」、あるいは「コミュニケーション(価値の伝え方)」に課題があることがほとんどです。より正確に言うと、集客にも課題はあるが、その前に、ほかの3つの課題を解決しなければならないことがほとんどです。
解決する順番が重要

マーケティングでよく使われる例えに「バケツの穴を塞いでから水を注ぐ」という鉄則があります。
前述の1〜3に課題があるのに、4の接点(集客)に注力するのは、まさに、穴の空いたバケツに水を注ぐようなものです。
マーケティングの課題解決は、以下の順番で行うようにしましょう。
「1. プロダクト & 2. ターゲット設定」
→「3. コミュニケーション」
→「4. 接点」
ポイントは、1と2はセットで行うこと。なぜなら、プロダクトの価値は、あくまでも「ターゲット顧客から見た価値」であり、つまりターゲットが変われば、プロダクトの価値も変わるからです。
順番としては上記の通りですが、それぞれの課題を「完璧に」解決しないと次に進めないわけではありません。プロダクトの価値、ターゲット設定、価値の伝え方、そのいずれも、「完璧な」正解はないからです。基本的には、確度の高い「仮説」を立てて次に進むイメージです。
たとえ仮説であっても、あるのとないのとでは、雲泥の差があります。
仮説なしで、やみくもに集客してしまうと、うまくいっても、いかなくても、その要因を分析できません。しかし、仮説をもち、仮説を検証するために集客を行えば、たとえうまくいかなかったとしても、大きな前進と言えるでしょう。
効果的な問い
ここまで読み進めて、「マーケティング課題は、プロダクト、ターゲット設定、コミュニケーション、接点のいずれかにあるとわかったが、自社の場合、それがどこなのかわからない」という方もいらっしゃると思います。
そのようなときにおすすめしたいのが、以下の2つの問いです。
「ターゲット顧客が、競合のプロダクトと比較しても、あえてこのプロダクトを選ぶ理由は何ですか?」
「競合のプロダクトと比較しても、あえてこの商品を選ぶお客様は、どんな悩み(あるいは欲求)をもった人ですか?」
これらの問いに対して、明確に、わかりやすく、説得力のある回答ができるのであれば、少なくとも「プロダクト」と「ターゲット設定」の課題はクリアしている可能性が高いでしょう。
さらに、もし私(第三者)が御社の店舗やWebサイトを見ただけで、上記の問いに正しく回答できるようであれば、「コミュニケーション」もクリアしている可能性が高いと言えます。
逆に言えば、私が御社のWebサイトを見ても、上記の問いに答えられないような状況であれば、「集客よりも先にやることがある」ということなのです。