2023/02/02

経営者が誤解しがちな「ターゲット設定」の意味

山下侑一郎

山下 侑一郎

2023/02/02

経営者が誤解しがちな「ターゲット設定」の意味

山下侑一郎

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2023/02/02

経営者が誤解しがちな「ターゲット設定」の意味

山下侑一郎

山下 侑一郎

中小企業のマーケティング課題を分析すると、「ターゲット設定」に問題があることが少なくありません。ターゲットが間違っているというよりは、ターゲットが “明確に” 設定できていないケースがほとんどです。

そこで今回は、マーケティング戦略におけるターゲット設定の重要なポイントを紹介したいと思います。「うちは大丈夫」「ちゃんと設定できている」と思うかもしれませんが、私の経験上、誤解されていることも多いため、ぜひ読み進めていただけますと幸いです。

よくあるターゲット設定

マーケティングに課題を感じている企業でも、「ターゲット設定に問題がある」と考えている経営者やマーケティング担当者は多くありません。なぜなら、「ターゲットはちゃんと設定できている」と考えてしまっているからです。

しかし、そんな企業に「この商品のターゲットは?」と尋ねると、返ってくるのは「20〜30代の女性」「福岡の中小企業」「◯◯の購入意向者」といったような内容だったりします。

決して間違った回答ではないのですが、これでは、マーケティング戦略において十分に機能するターゲット設定だとは言えません。

問題は、ターゲット設定の「範囲」と「軸」にあります。

Point 1 「コアターゲット」

ターゲットとは、直訳すれば「的(まと)」のことです。しかし、その的のどの「範囲」を指すかによって、意味合いが変わってくるのです。

多くの中小企業経営者やマーケティング担当者が「ターゲット」と言われてイメージするのは、「的全体」。つまり、「その商品やサービスを購入する可能性のあるすべての人たち」です。

それが間違いだ、と言いたいわけではありません。商売の市場規模を判断する際には、「的全体」を把握しておくことも重要だからです。

しかし、マーケティングの専門用語で言えば、それはどちらかと言うと、「ターゲット」ではなく、「TAM(Total Addressable Market / 獲得可能な最大市場規模)」という概念で考えるべきことでしょう。

ここで行いたいのは、市場規模の判断ではなく、マーケティング戦略の立案です。では、マーケティング戦略における「ターゲット」とは何を指すのでしょうか。

それは、ずばり「的の中心(コアターゲット)」です。

「的の中心(コアターゲット)」とは、その商品やサービスを購入する可能性のあるすべての人たちの中でも、「その商品やサービスに対してもっとも強く価値を感じてくれる人たち」のことです。

マーケティング戦略を立てるうえでは、ここを明確にする必要があるのです。

ちなみに、私が「ターゲット」と言うときは、基本的にこの「的の中心」を指しています。本来は、より正確に「コアターゲット」と言うべきなのかもしれません。

範囲を狭める意義

一見すると、的全体よりも範囲が狭くなるため、「ターゲットを狭めること」に不安を感じる経営者もいることでしょう。

しかし、ターゲットを狭めることは、必ずしも、広告などを届ける範囲(リーチ)を狭めることではありません。マーケティング戦略において、コアターゲットを設定することの意義は、商品やサービスの価値を高め、その価値がより伝わる方法を見出すことにあります。そのためには、「中心」を明確にすることが欠かせないのです。

アーチェリーやダーツをイメージしてもらえればわかると思いますが、しっかりと「中心」を意識して狙えれば、中心から多少それても、的には当たるのです。逆に、「中心」がわからなければ、的に当てることさえも難しくなるでしょう。

Point 2 「心理的な特徴」

問題は、ターゲット設定の「範囲」と「軸」にあると言いました。今度は「軸」について解説します。

「ターゲットは、20〜30代の女性」と回答した経営者に、「では、コアターゲットは?」と聞いても、「28〜32歳の女性」と返されることでしょう。

当然、私が知りたいのはそんなことではありません。ここで、ターゲットを定義する「軸」が重要になってくるのです。

一般的に「ターゲット」と言うと、年齢や性別、居住地、職業などの「デモグラフィック(人口統計学的)」な特徴で考えられがちです。しかし、より重要なのは、「サイコグラフィック(心理学的)」な特徴です。

年齢や性別が同じだからと言って、みんなが同じ商品を購入するわけではありません。どの商品を選ぶかは、その人のもっと内面的で心理的な特徴によるところが大きいのです。

具体的に言えば、どんな「悩み」「不安」「課題」、あるいは「欲求」「願望」を持った人なのか。

ターゲットの「悩み」や「欲求」が変われば、その人が商品に対して感じる「価値」も変わってきます。つまり、ターゲットの「悩み」や「欲求」が明確でなければ、商品の「価値」も明確ではないため、「価値」を高めることも、伝えることもできないということなのです。

もうひとつの「ターゲット」

「コアターゲットとは、その商品やサービスに対してもっとも強く価値を感じてくれる人たちのこと」だと述べました。何らかのマーケティング施策を実行するのであれば、基本的に、この「コアターゲット」を対象にする(狙う)ことになります。

今、「基本的に」と言ったのは、例外もあるからです。

例えば、顧客層の拡大を目的とする場合など、あえて「コアターゲット」とは違う層を対象にすることもあります。

そのような「ターゲット」を、「コアターゲット」とは区別するため、「コミュニケーションターゲット」「プロモーションターゲット」「セールスターゲット」「戦略ターゲット」などと呼ぶこともあります。呼び方はさまざまですが、意味するところは基本的に同じです。

ただし、このような場合でも、「コアターゲット」を明確にしておくことの重要性は、何ら変わりません。

まとめ

マーケティング戦略のターゲット設定において重要なのは、「的全体」ではなく、「的の中心」。つまり、「コアターゲット」を明確に定義することです。そして、その際は、「デモグラフィック」な特徴よりも、「サイコグラフィック」な特徴。つまり、「心理的な特徴」で定義することが重要なのです。

改めて「ターゲット設定とは何か」と問われれば、「その商品・サービスの価値をもっとも感じてくれる人たちの心理的な特徴を明確にすること」だと言えるでしょう。

とはいえ、中小企業の経営者やマーケティング担当者に、「この商品のコアターゲットのサイコグラフィックな特徴は何ですか?」と聞いても、答えに窮することでしょう。

そんなときは、このように聞くのがいいかもしれません。

「競合商品と比較しても、あえてこの商品を選ぶお客様は、どんな悩み(あるいは欲求)をもった人ですか?」

この問いに対して、明確に答えられるのであれば、その企業のターゲット設定は申し分ないと言えるでしょう。

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山下侑一郎
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福岡在住。フリーランスのマーケティング・プランナー。 広告会社「アサツー ディ・ケイ」を2018年に退社後、独立。現在は福岡の中小企業を対象に、Webマーケティング支援事業を行う。