2020/05/08

大切なのは“戦略”? それとも“戦術”?

山下侑一郎

山下 侑一郎

2020/05/08

大切なのは“戦略”? それとも“戦術”?

山下侑一郎

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2020/05/08

大切なのは“戦略”? それとも“戦術”?

山下侑一郎

山下 侑一郎

マーケティングを行ううえで、「戦略」と「戦術」、どちらがより重要かわかりますか?

もし、この質問に対する答えを本質的に理解していないとしたら、貴重なマーケティング予算を無駄にするだけでなく、自社にとって大きなマイナスの影響を与えかねません。

「戦略」と「戦術」の違い

そもそも「戦略」と「戦術」の違いは何でしょうか。ごっちゃになってしまっている人も少なくないと思います。

私は、この2つを以下のように定義しています。

戦略:目的を達成するための大局的な計画
戦術:戦略を実行するときに用いる個別の手段

たとえば、「新商品の販売数を増やす」という目的があるとします。このとき、「広く認知を取りにいく」などの“大局的な計画”が、いわゆる「戦略」に当たります。全体的な“方針”や“方向性”と言い換えてもいいでしょう。

それに対し、認知度を上げるための“手段”として「TVCMを打つ」という選択をすれば、それが「戦術」に当たります。

「戦略」と「戦術」、どちらが大切?

では、この「戦略」と「戦術」、ビジネスやマーケティングを行ううえで、どちらがより大切だと思いますか?

この問いに対する答えは、日本を代表するマーケター・森岡毅さんの著書『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方』でとてもわかりやすく解説されていますので、ここで紹介させていただきます。

ポイントは、戦略か戦術の2択ではなく、下記の4択で考えることです。

戦略と戦術、どっちが大切?

この4つを「結果が良い」と思う順番に並べて見てください。

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 シンキングタイム!

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 【答え】

戦略と戦術、どっちが大切?の答え

いかがですか? 正解できましたか?

「A」が1番というのは疑う余地もありませんが、次点を「B:良い戦略+悪い戦術」と「D:悪い戦略+良い戦術」で迷った人が多いのではないでしょうか。

ですが、意外にも「D」は“最悪”。

私も最初にこの本を読んだとき、答えは「A→B→D→C」だと思ってしまいました。

なぜ、戦略は悪くても戦術が良い「D」より、戦略も戦術も悪い「C」のほうが“マシ”なのでしょうか?

戦略のミスは戦術では補えない

くだんの本では、秀逸なたとえとともに解説されています。

まず、「大阪のUSJから東京のTDR(※正しくは千葉)まで行く」という目的があるとします。このときのA〜Dをあらわしたのが下図です。


戦略と戦術の解説

戦略も戦術も良いAは、「正しい方向(良い戦略)」に「飛行機という最適な手段(良い戦術)」で向かったので、TDRに行くという目的を達成できました。しかしBは、正しい方向に向かったものの、「自転車という不適切な手段(悪い戦術)」を選択したため、TDRには到着できませんでした。しかし、TDRに近づいたという意味で“次善”といえます。

問題は戦略が悪かったCとD。

ここでいう「戦略が悪い」とは、間違った方向(たとえば香港ディズニー)に向かうことを意味します。戦略も戦術も悪いDは、方向が間違っていたものの、戦術も悪かった(自転車で向かった)ため、元にいた場所からあまり離れていません。これなら、今からでもリカバリーが可能です。

しかし、Dはどうでしょうか。間違った方向に向かったのはCと同じですが、戦術が良かった(飛行機で向かった)ため、香港ディズニーに到着してしまっています…。目指した場所はおろか、元にいた場所からも、激しく離れてしまっているのです。

“つまり戦略の方が戦術よりも大事なのです。戦略の大きなミスは戦術ではリカバリーできないからです”
森岡 毅『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方』

そう、向かう方向(戦略)が間違っていたら、どんな手段(戦術)を選択しても、どれだけ必死に頑張っても、目的地に近づくことはできないのです。

私はこの本を初めて読んだとき、あまりの説得力に心から感動したことを覚えています。

戦略がより重要になっていく

ここまで読んでいただいたのであれば、いかに「戦略」が重要かお分かりいただけたと思います。

でも残念なことに、マーケティングの世界では、「戦略」がなおざりになってしまっているケースが少なくありません。「戦略が悪い」というより、そもそも「戦略がない」のです。

議論されるのは、なぜか「戦術」ばかり。あくまで“手段”でしかない戦術が、いつの間にか“目的”にすり替わっていることもあります。

「SNSをやろう!」
「動画を作ろう!」
「ホームページをリニューアルしよう! 」
「これからはオウンドメディアだ!」

それ、ぜんぶ「戦術」の話です。

市場自体が伸びていた時代、そもそも取りうる戦術が限られていた時代には、戦略がなくてもどうにかなったのかもしれません。しかし、戦術が無数にある今、そもそもの戦略を大きく間違えば致命傷にもなりかねません。

では、マーケティングの戦略はどのように考えるべきか。

それを語り出すとものすごく長くなってしまうので、また別の機会に書きたいと思います。

ひとまず今日は、「戦略の大きなミスは戦術ではリカバリーできない」というビジネスの大原則だけ、覚えておいていただければ幸いです。

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山下侑一郎
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山下 侑一郎

福岡在住。フリーランスのマーケティング・プランナー。 広告会社「アサツー ディ・ケイ」を2018年に退社後、独立。現在は福岡の中小企業を対象に、Webマーケティング支援事業を行う。