普段「ブランディング」という言葉を、どういう意味で使っていますか?
ブランディングは、マーケティングを行ううえで極めて重要な役割を果たす概念です。しかし、ブランディングという言葉の意味は、人によって解釈が大きく異なり、さまざまな誤解の種になっているようにも感じます。
そこで今回は、ブランディングの意味とその本質についてお話させてください。
ブランディングという言葉が出たら要注意
ブランディングというと、以前は大企業のものという印象もありましたが、最近では中小企業の経営者も、「ブランディングに力を入れたい」とよくおっしゃいます。
そのこと自体はとてもいいことだと思いますが、「ブランディング」という言葉をどういう意味で使っているかが重要です。
とにかくかっこよく見せたい
企業理念を刷新したい
企業や商品のロゴを作りたい
企業や商品の認知度を上げたい etc.
ブランディングという言葉の奥にある本意は、人によって本当にさまざまです。
もちろん、言葉の正しい意味を理解することも大切ですが、それ以上に、関係者同士が同じ意味で同じ言葉を使うことが重要だと思っています。
ブランディングの本質
ブランディングにはさまざまな定義がありますが、私がもっとも腑に落ちたのは、「デジタル時代の基礎知識『ブランディング』」という本に書かれている以下の一節です。
ブランド戦略の本質を一言で表現するならば、「ターゲット顧客にこう思われたら選ばれるであろうという価値を決めたら、そのような印象が残るようにすべての顧客体験や施策に一貫性を持たせるよう整える」ということ。
山口 義宏. デジタル時代の基礎知識『ブランディング』
これほどブランディングの本質を的確に表現されている文章はないと思いますが、あえて自分の言葉に翻訳すると、以下のようになります。
ブランディングとは、自社の商品・サービスが選ばれる理由(すなわち、顧客にとっての価値)を見極め、それが人の頭の中にイメージとして強く定着するよう、一貫性を持たせながら、あらゆる接点を改善すること。
こう定義すると、ブランディングをしたいと思ったときに、まず何から始めるべきなのか、自然と見えてこないでしょうか?
つまり、ブランディングのはじめの一歩は、購買者が自社の商品に対してどのようなイメージを持ってくれたら、数ある競合商品の中から自社商品を選んでくれるのか、という問いに向き合うことだと言えるのです。
ヒントは既存のお客さんが持っている
このとき、「こういう風に思われたい」という自社の願望を出発点にするのは危険です。実態とかけ離れたイメージが定着することはまずありませんし、競合商品にも同様のイメージを持っているとしたら、それが自社商品を選択する理由にはならないからです。
あくまでも、「本当にそう思ってもらえる根拠はあるのか」「それは自社商品を選ぶ理由になるのか」という視点を忘れていはいけません。
まずは、すでに自社商品を選択してくれている既存のお客さんに「なぜこの商品を選んだのですか?」と聞いてみるのがおすすめです。
あるいは、自社の顧客と競合他社の顧客で、自社商品に対するイメージにどのような差があるのか、調査してみるのも有効だと思います。
ブランディングは魔法の杖じゃない
ブランディングはよく「付加価値」の文脈で語られることがあります。もしかしたらそれが、誤解を生む原因になっているのかもしれません。
ブランディングは決して、存在しない価値をイメージ戦略で創造する魔法の杖ではありません。すでにある価値を見極め、それをより強く広く認知してもらうためにはどうするべきか、という話です。
ふさわしい価値を見つけられないのであれば、価値自体を作るところから検討しなければなりません。商品を改良するのか、ターゲットを変えるのか、商品の価値を再定義するのか。やり方はさまざまです。
顧客にとっての価値が明確になっていないまま、ロゴやパッケージのデザインを変えて、かっこいい広告を作ったとしても、望ましい成果は得られません。かっこよく見せることがブランディングの本質ではないからです。
・ 顧客が自社の商品・サービスを選んでくれる理由は何か?
・ 顧客にとっての価値は何か?
まずはここから、始めてみてはいかがでしょうか。